北に飛ぶ
作詞：皆川庄五郎
作曲：不詳
収録：軍歌大全集（評）
１．
鳴呼玉楼の春の宵 燦乱の夢未だきに
蜀魂一たび血に鳴きて 驚き目覚むる皋月花
今日市ケ谷に散り失せて 玉散る波に任せつつ
多恨の我は北に飛ぶ
２．
上野の山の鐘の音も 今日を限りと聞き収め
つづく思ひの数々に 恋しき旅の鹿島だち
田端の草に置く露に 衣の袖を絞りつつ
多恨の我は北に飛ぶ
３．
浦和の波に糟ぐ舟の いつか我が身に契られて
艤い出でしその日より 浮世の波の荒きかな
神の宿りの大宮に 行手の幸を祈りつつ
多恨の我は北に飛ぶ
４．
宇都の宮居はいと静か 夕日の光り輝やけど
胸の愁ひは鎮め得で うち連れ帰る友烏
果てなき原の夕暮を 車窓に独り眺めつつ
多恨の我は北に飛ぶ
５．
峰の松風誰がために 調べ奏する夷歌
またも泣かるる身の運命 白河の関は越えてけり
ああ ここよりは陸奥の国 夢にも人に会はずして
多恨の我は北に飛ぶ
６．
潮逆巻き波吼ゆる 津軽の海の闇の夜に
甲板の欄に身を寄せて 静かに歌ふＫＤの歌
ああ この夏は何処にて 玉なす汗を拭ひなん
多恨の我は北に飛ぶ
７．
生れし里は波いづこ 馴れし都は雲幾重
北辰直下のこの島に 過ぎしを偲び今を泣き
長嘯 月に対しては 我は悟れり「命なり」と
多恨の我は北に飛ぶ
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