1.
ひと日ふた日は晴れたれど
三日四日五日は雨に風
道の悪しきに乗る駒も
踏みわづらひぬ野路山路
2.
雪こそ降らね冴えかへる
嵐やいかに寒からん
氷こそはれこの朝
霜こそおけれこの夕
3.
独乙の国もゆき過ぎて
露西亜の境に入りにしが
寒さはいよいよまさり来て
降らぬ日もなし雪あられ
4.
さびしき里にいでたれば
ここはいづことたづねしに
聞くもあはれやそのむかし
亡ぼされたる波蘭
5.
かしこに見ゆる城のあと
ここに残れる石の垣
照らす夕日は色さむく
飛ぶもさびしや鴣鵠の影
6.
栄枯盛衰世のならひ
その理は知れれども
かくまで荒るるものとして
たれかは知らむ夢にだに
7.
存亡興廃世のならひ
その理をうたがはむ
人は一度来ても見よ
哀れはかなきこのところ
8.
咲きて栄えし古の
色よ匂ひよいまいづこ
花の都のその春も
まこと一時の夢にして |