宮さん宮さん 
        作詞:品川弥二郎 
        作曲:不詳 
        1868年 
        収録:軍歌・戦時歌謡大全集1
        明治・大正の軍歌(評) 
        1. 
        宮さん宮さんお馬の前にひらひらするのは何ぢやいな 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        あれは朝敵征伐せよとの錦の御旗ぢや知らないか 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        2. 
        一天万乗の 帝王に手向かひするやつを 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        ねらひ外さずどんどん打ち出す薩長土 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        3. 
        伏見 鳥羽 淀 橋本 葛葉のたたかひは 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        薩長土肥の大たる手際ぢやないかいな 
        トコトンヤレ トンヤレナ  
        4. 
        音に聞こえし関東武士どつちへ逃げたと問うたれば 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        城も気概も捨てて吾妻へ逃げたげな 
        トコトンヤレ トンヤレナ  
        5. 
        国を負ふのも人を殺すも誰も本位ぢやないけれど 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        薩長土肥の先手に手向かひする故に 
        トコトンヤレ トンヤレナ   
        6. 
        雨の降るような 鉄砲の玉の来る中に 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        命惜しまずさきがけするのも皆御主の為故ぢや 
        トコトンヤレ トンヤレナ 
        <メモ> 
         「日本初の軍歌」ともいわれる歌。作詞は品川弥二郎が関与したのはほぼ間違いないが[1]、作曲者についてはいまだ定まらない。大村益次郎という説[2]もある。 
         堀内によれば、「官軍の将士はことごとくこの歌を歌いながら進撃した」というが、根拠がない。今日では「最初の軍歌」説は疑問視されているといってよいだろう。 
         小池藤五郎によれば[3]、この歌の原型は1885年にすでにみられる「流行トンヤレ節」に遡るという。ここから「トンヤレ唄」という流行歌が誕生し、これが元となって「宮さん宮さん」(「都風流トンヤレ節」)となったとする。小池の論文によれば、「トンヤレ唄」の例として次のようなものがあげられている。 
         「殿さん殿さん、お馬の股で、ブラブラするもナ、何じややら、こりやトンヤレトンヤレナ」 
         この説が事実だとすると、「最初の軍歌」の出自は随分卑猥だったということになる。 
        <脚注> 
        [1] 倉田喜弘 『「はやり歌」の考古学―開国から戦後復興まで』 文芸春秋、2001年、50頁。 
        [2] 堀内敬三 『定本 日本の軍歌』 実業之日本社、1969年、18頁。 
        [3] 小池藤五郎 「元亀・天正頃の軍歌」 『立正大学文学部論叢』第48号(1974年2月), 3-40頁、14-18頁。 
         |