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敵は幾万
1897

作詞:山田美妙斎
作曲:小山作之助

 

収録CD:ビクター「軍歌・戦時歌謡大全集」(戦前録音)

1.
敵ハ幾万ありとても
すべて烏合の勢なるぞ
烏合の勢にあらずとも
味方に正志(ただし)き道理あり
邪ハそれ正に勝難く
直は曲にぞ勝栗の
堅き心の一徹は
石に箭の立つ例あり
石に立つ箭の例あり
などて怖るる事やある
などてたゆたふ事やある

「堅き心の一徹は〜石に立つ箭のためしあり」・・・「広出獵、見草中石、以為虎而射之、中石没鏃、視之石也。因復更射之、終不能復入石矣。」(『史記』「李将軍列伝」)
2.
風に閃く聯隊旗
記紋(しるし)は昇る旭(あさひこ)
旗ハ飛来る弾丸に
やぶるる程こそ誉なれ
身ハ日の本の兵よ
旗にな耻じそ進めよや
斃るるまでも進めよや
裂かるるまでも進めよや
旗にな恥ぢそ恥ぢなせそ
などて怖るる事やある
などてたゆたふ事やある
 
3.
破れて迯(に)ぐるは国の恥
進ミて死ぬるハ身の誉
瓦となりて残るより
玉となりつつ砕けよや
畳の上にて死ぬ事は
武士の為すべきみちならず
躯を馬蹄にかけられつ
身を野晒になしてこそ
世に武士の義と言はめ
などて怖るる事やある
などてたゆたふ事やある
「瓦となりて残るより 玉となりつつ砕けよや」・・・「大丈夫寧可玉砕、不能瓦全」(『北斉書』「元景安伝」)

 

<備考>

[曲について]
 明治から昭和にかけて歌い継がれた名軍歌。

 「敵は幾万」は、『新体詞選』に掲載された「戦景大和魂」という詩から、三つの歌詞を取りつくられました。上掲の歌詞は『新体詩選』からの完全転載。漢字もすべて写せているはずです。音源と違う箇所もあると思いますが、歌詞が間違って一人歩きするほどよく歌われていたということです。

 「玉砕」の故事は有名ですが、「石に矢」は案外知られていないかもしれません。なお「勝栗」は単なる掛詞であって出典はないと思います。

 後年の替え歌としては「進め矢玉」が有名。

<関連ページ>
戦景大和魂
英訳版「敵は幾万」

<参考関連文献>
山田美妙―人と文学 (日本の作家100人)

 

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